外国人の起業に必要な経営・管理ビザとは?新基準対応


日本でビジネスを始めたいのだけど、どうやったらいいの?どのようなビザを取得したらいいの?

日本でビジネスを始めたいということですね!
外国人の方が日本で会社を作ったり、経営に携わったりする場合は、「経営・管理ビザ」を取得するのが一般的です。
本記事では、ビザの取得要件や注意点を2025年10月16日施行された改正を踏まえて解説致します。
経営管理ビザとは?
経営管理ビザは、外国人が日本で会社を設立して経営に携わる、あるいは既存の会社の役員として経営管理業務を行うための在留資格です。
経営管理ビザの主な特徴
- 業種の制限も原則なし:風営法に抵触しない限り、飲食店・IT・貿易など幅広い事業が対象。
- 法人設立が基本だが、個人事業主としての申請も一部可能。
- 在留期間は3か月、4か月、1年、3年、5年のいずれか。初回は1年が多く、更新を重ねて事業の安定性を示すことで長期の許可につながります。
経営管理ビザの要件
2025年11月から改正された経営管理ビザ取得のための新しい5条件をご紹介いたします。
| 資本金・出資総額 | 3,000万円以上 |
| 経営者の経歴・学歴 | 経営・管理経験3年以上 または 経営管理または事業分野の経営に関連する修士相当以上の学位を取得していること |
| 雇用義務 | 1人以上の常勤職員 |
| 日本語能力 | 申請者又は常勤職員のいずれかが相当程度の 日本語能力を有すること |
| 専門家の確認 | 専門家による事業計画の確認 |
1.3,000万円以上の資本金
株式会社の場合は資本金、合名会社・合資会社・合同会社の場合は出資の総額をさします。
個人事業主の場合は、事業所の確保や雇用する職員の給与(1年間分)、設備投資経費など事業を営むために必要なものとして投下されている総額をさします。
資本金については「出所」が厳しく審査され、不正な資金や「見せ金」は認められません。通帳や送金記録、借入証明などで証明する必要があります。
2.経営者の経歴・学歴
以下のいずれかを満たす必要があります。
- 経営管理における博士、修士、専門職の学位を取得していること
- これから行う事業に関する博士、修士専門職の学位を取得していること
- 経営管理の経験が3年以上あること
3.1人以上の常勤職員の雇用義務
1人以上の常勤職員の雇用が必要です。
なお、常勤職員は、日本人または『特別永住者』、『永住者』、『日本人の配偶者等』、『永住者の配偶者等』、『定住者』の在留資格をもつ外国人に限られます。
4.日本語能力(N2以上)
申請者または上記でご説明した常勤職員のどちらか少なくも1名は日本語能力が必要です。
日本語能力の目安は以下の通りです。
- JLPT試験でN2以上
- BJTビジネス日本語能力テストにおいて400点以上
- 中長期在留者として日本に20年以上住んでいる
- 日本の大学等を卒業している
- 日本の義務教育を修了し、高校を卒業している
5.経営の専門家による事業計画の確認
事業計画が実現可能かどうかを、経営の専門家が確認する必要があります。
経営の専門家とは以下のいずれかの方になります。
- 中小企業診断士
- 公認会計士
- 税理士
その他の要件や注意点
1.経営管理の実態を伴った事業内容が必要
業務委託を行うなどして経営者としての活動実態が十分に認められない場合は「経営・管理」に該当する活動とは認められません。
2.自宅兼事務所は原則NG
自宅兼事業所は、原則として認められません。自宅とは別に事業規模にあった事務所を構える必要があります。
3.許可基準を満たしていない場合は『永住権』への変更不可
『経営・管理』の許可基準を満たしていない場合は『永住権』への変更ができません。
4.長期間の出国には正当な理由が必要
在留期間中、正当な理由なく長期間の出国を行っていた場合は、活動実態がないとみなされ、経営管理ビザの更新が認められません。
5.事業主として税金や社会保険の支払いは義務
税金や社会保険の支払い義務を適正に行っていない場合は経営管理ビザの更新ができません。
専門的な分野となりますので、税理士や社会保険労務士等の専門家を利用する事をおすすめします。
6.事業に必要な許認可を取得していること
事業に許認可の取得状況等を証明する資料の提出が必要です。経営管理ビザ取得後でないと取得できない許認可などは次回のビザ更新時に提出が必要となります。
経営管理ビザの必要書類
代表的な書類は以下です(状況により追加あり)。
- 在留資格認定証明書交付申請書または在留資格変更許可申請書
- パスポート、在留カード
- 資本金の出所を示す証拠資料(通帳、送金記録など)
- 登記簿謄本、定款
- 事業計画書
- 株主名簿、役員報酬を決定する議事録
- オフィスの賃貸借契約書、写真
- 税務署提出書類(法人設立届出書、給与支払事務所等開設届など)
- 事業に必要な許認可を証明する書類
経営管理ビザ取得までの流れと必要な工程
経営管理ビザは、単に「会社を作って申請すれば良い」というものではありません。実際には以下のように多くの工程があり、申請から許可まで数か月、場合によっては1年以上かかるケースもあります。
主な工程
1.会社を設立する
定款の作成・認証、資本金の払い込み、法務局での法人登記を行います。
2.事業計画書を作成する
事業の具体的な内容、市場分析、資金計画、収支予測をまとめた計画書を作成します。
3.法人の銀行口座を開設する
会社名義の銀行口座を開設し、事業資金を入金して運用準備を整えます。
4.オフィスを確保する
事業に適した事務所・店舗を法人名義で契約し、事業の実体を整えます。バーチャルオフィスは原則不可です。
5.各種社会保険の加入手続きを行う
会社設立後は、健康保険・年金・労働保険などの加入手続きを済ませる必要があります。
6.営業許可を取得する(必要業種のみ)
飲食業、建設業、古物商などの事業を行う場合は、所轄官庁からの営業許可が必要です。
7.入管へ経営管理ビザを申請する
すべての準備が整った後、必要書類を揃えて入管に申請します。審査には数か月を要し、追加資料を求められる場合もあります。
このように、経営管理ビザは「事業の実体を整えたうえで申請する」という流れになるため、スムーズに進めても半年程度、準備や許可取得に時間がかかると1年以上かかる場合も珍しくありません。
審査期間
- 東京入管:約3~12か月
- 地方入管:1~3か月
※一般的な就労ビザより長めにかかります。
まとめ
経営管理ビザは、就労ビザの中でも特に取得が難しい在留資格です。事業計画書の作成、オフィスの確保など、クリアすべき要件が多いため、専門家に依頼するメリットは非常に大きいといえます。
さらに、2025年10月16日より経営管理ビザの取得要件が大幅に厳格化されています。そのため、日本での起業や経営管理ビザの取得をご検討中の方は、しっかりと準備を進めることが重要です。
最新の制度情報や、ご自身の状況に合わせた具体的な手続きについては、当事務所までお気軽にご相談ください。初回相談は無料ですので、安心してお問い合わせいただけます。
